東京新聞

創作舞踊部 1位

久住亜里沙(出演:佐藤洋介、久住亜里沙)
「ハクモクレンの下で」
能美健志&ダンステアトロ21(指導者:能美健志)

入賞した感想を聞かせてください
この度は歴史あるコンクールで第一位受賞を頂けました事を大変光栄に思っております。
この作品は私の父が余命宣告を受けた3年前から、彼の為に作品を創ろうと心に決めていました。父の看病が続き、亡くなった後は双子の妊娠、出産と育児で多忙になり新作が作れない、踊れない時期が続きました。産後で体型も変わり、筋力も落ちてダンサーとして戻れないと諦めそうになった時もありましたが、この作品だけは完成させなければと必死に創りました。
最期に父に贈った白木蓮の花。
花瓶に沢山、白木蓮を生けて飾りました。毎日毎日、白木蓮の花を咲くのを楽しみにしていた父でしたが、花が咲く前に亡くなってしまいました。
ボヤッと頭の中で思い描いていた世界がパートナー佐藤洋介さんのお陰で少しずつ形になり、道具、振付、構成に衣装、作曲、照明が加わり私の頭の中でカチッとハマりました。プロフェッショナルの方々に囲まれて、幸せな時間でした。
コンクールなので、もっとテクニックを入れなければいけないのではないかと振付の面で、とても悩みましたが、一番作品の中に込めたい想いは『咲いている白木蓮の花を贈りたい。』そして、上手前に咲いている白木蓮の木の情景がお客さんに見えるように。
このコンセプトだけはブレないよう創りました。
高校一年生の頃からテクニック部門にチャレンジし、中々上位に入れず苦悩が続きました。振付家として頑張ろうと決心し、部門を創作に変えて8年目でようやく花を咲かせる事ができました。最後まで諦めず、コンクールに挑戦し続けて良かったです。能美健志先生と表彰台にあがれて、とても嬉しかったです。
この賞に恥じぬよう舞踊家として、更に邁進していきたいと思います。
踊りを始めたきっかけは?
小学校2年生の頃、同級生がバレエを習っていて、可愛いレオタードと衣装が着たくて習い始めました。
踊りを続けていて一番楽しかったこと・うれしかったことは?
30歳の頃にコンクール時代に知り合った仲間や以前、共に踊った事のある仲間達を集めて長編の作品を作り自主公演を発表しました。
その振付の中で仲間達に高くリフトをされ、空中に浮かぶシーンがあったのですが鳥肌と涙が止まりませんでした。終演後の達成感は今でも忘れられない大切な嬉しい思い出です。
踊る時に常に気をつけていることは?または、一番大切にしていることは?
足の運びや間合いの取り方、パートナーの存在を常に感じとり作品の情景がお客さんに伝えられるように気をつけて踊っています。一番大切にしているのは、その作品の役柄に入りこむ事です。師匠から受け継いだ『女優スイッチ』を押して集中力を最後まで途切れる事なく演じきることに全てをかけています。
将来の夢は?
自身のスタジオを経営し、後進の指導に力を注ぎ、弟子をつくることです。そして、弟子たちが成長して、いつか私の作品を踊ってもらう事が夢です。

写真:スタッフ・テス株式会社 根本浩太郎