紙面から(パラリンピック)

車いすバスケ 強敵相手に「理想」体現 予選敗退もカナダ破る

日本−カナダ シュートを狙う藤本怜央=伊藤隆平撮影

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 車いすバスケットボール男子は予選通過を果たせなかったが、4戦目の相手、強敵カナダに本来の力を出し切り快勝した。

 及川晋平ヘッドコーチ=HC=(45)が重視してきたのは、どの国にも負けない緻密なプレーだった。どういった局面で、どの5人がコートにいて、誰がどう動くべきか。理論を築き、選手に繰り返し説明してきた。

 59−67で競り負けた大一番のオランダ戦では、香西宏昭(28)=千葉市若葉区、NO EXCUSE、藤本怜央=れお=(32)=静岡県島田市出身、SUS=の両エースはフル出場に近かった。疲れが出た終盤、わずかに失速し、及川HCは「交代の判断がうまくできなかった」と悔やんだ。カナダ戦では要所で選手を入れ替え、全員出場で76−45の大勝をつかんだ。

 リオ開幕直前の会見で「大勢のメディアが来てくれている。僕が出場した2000年のシドニー・パラリンピックと大違いで夢のよう」と話した及川HC。「カナダ戦こそ実現させたかったバスケ。20年の東京につなげられる」と胸を張った。 (伊藤隆平)

◆エース・藤本主将「若手と一緒に飛躍を」

 「自分がうまくなれば勝てる」。その思いを体現するかのように、初戦で22点、第3試合で25点と大量得点した。

 エースで主将でもある藤本怜央は2004年のアテネ大会からパラリンピックに連続出場している。ただ、メダルはいずれも遠かった。世界レベルで日々戦うため、14年9月にドイツへ渡り、現地リーグのプロチーム「ハンブルガーSV」へ入団した。

 ドイツで学んだのはプロとしての生き方。観客はサッカーを見るようにビール片手に試合を楽しむ。敵の本拠地ではブーイングを浴びせられることも。人気選手は車いすバスケの専門誌に取り上げられる。「調子が悪い時でも安定したプレーを求められる」

 小学3年生のころの交通事故で右脚の膝から下を切断したが、鍛え上げた上体は強靱(きょうじん)だ。外国人選手にも押し負けない。「本当はもっと点を狙いたい」。そんな欲求を抑え、及川晋平HCが求めるチームプレーに徹した。

 「自分たちのプレーができた時間もあったが、試合の最後まで保つ力が足りなかった」。予選敗退が決まり、反省する。「若い選手が成長している。彼らに経験を伝え、一緒に飛躍していきたい」。リオ大会後はすぐドイツに戻り、チームに合流する。4年後に向け、無駄遣いする時間はない。 (伊藤隆平)

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