紙面から(パラリンピック)

引きこもりから銀 陸上400m・佐藤友選手、猛練習4年

陸上男子400メートル(車いすT52)で銀メダルを獲得し、日の丸を掲げる佐藤友祈選手=13日、リオデジャネイロで(共同)

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 【リオデジャネイロ=本社取材団】リオデジャネイロ・パラリンピック第七日の十三日、陸上男子400メートル(車いすT52)で佐藤友祈(ともき)選手(27)=グロップサンセリテ=が銀メダルを獲得。日本のメダルは銀四、銅五の合計九個となった。

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 佐藤友祈選手は脊髄炎で車いす生活になって目標を見失い、1年半も引きこもった。だが、テレビで流れるロンドン大会の映像を目にして「自分もリオに出たい」と決心。猛練習で初出場を果たし、銀メダルを獲得した。「胸の鼓動が高まるのを体で感じた。感動した」と夢の舞台を味わった。

 静岡県藤枝市出身。夢を探そうと上京し、アルバイト生活を送っていた二十一歳の時、仕事帰りに自転車に乗っていて、意識を失って倒れた。突然の発症で肋骨(ろっこつ)から下の感覚がなくなり、左腕もまひ。握力もほとんどなくなった。

 外に出る気力を失い、自宅に引きこもる日々。ふとテレビで目にしたのが車いす陸上競技だった。風を切り、猛スピードでトラックを駆け抜ける選手たちが「格好良かった」。競技を始めた。

 才能が開花したのは、仕事と競技の両立を目指して二〇一四年に移り住んだ岡山。過去二回パラリンピックに出場したベテラン松永仁志選手(43)との出会いだった。当時は引きこもりの影響もあって太った体形で、競技経験も乏しかった佐藤選手。「パラリンピックに出たい」と打ち明けられた松永選手は「勘違いしている」と思ったが、一緒に練習してその姿勢に驚いた。

 抜群の集中力で脇目も振らず走り込む。夢中になり過ぎて何度も人にぶつかり、土手から転げ落ちたことも。松永選手は「不器用だが諦めず、くじけない」と認め、経験を惜しげなく伝えた。一五年の世界選手権は男子400メートルで優勝。関係者を驚かせた。

 武器は加速力。夢をかなえたリオで、優勝した米国人選手を最後まで追い上げた。その差はわずか0・46秒。佐藤選手は初のパラリンピックで銀メダルをつかみ「最高の舞台でベストを尽くせた」。ただ「力不足を感じた」と笑顔はなかった。

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