紙面から(パラリンピック)

競泳50m平 北京の金メダリスト鈴木 失意の4位

男子50メートル平泳ぎ決勝でスタートする鈴木孝幸=田中久雄撮影

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 結果が映し出された電光掲示板をぼうぜんと見つめていた。レース前半は首位を泳いでいたが、終盤で次々と追い抜かれた。

 49秒96。両手足の一部がない鈴木孝幸(29)=千葉県浦安市、ゴールドウイン=は14日にあった本命種目の競泳男子50メートル平泳ぎ(運動機能障害SB3)で4位に終わった。「ゴールするまではいけたと思っていた。悔しいというか、ショックが大きい」とうつむいた。

 パラリンピックには2004年アテネ大会から出場を続け、08年北京では金メダリストに。09年には当時の世界記録を樹立した。

 「なんであのころ、あんな力が出せたのか分からない」。12年のロンドン大会前からスランプに陥り、同大会は50秒26。銅メダルだったが、到底納得できなかった。

 スランプ打開のため練習環境を変えようと翌13年、英国ニューカッスルのノーザンブリア大へ会社の支援で留学。障害者アスリートの指導に実績があることで世界的に知られる水泳コーチの教えを受けている。日本と違う実戦形式の練習に力を入れた結果、渡英から半年後には、安定して49秒台が出せるようになった。

 英国はパラリンピック発祥の地であり、ロンドン大会が成功した実績もある。テレビのスポーツ番組で障害者スポーツの主要大会の結果が毎日のように紹介され、知り合った人たちが「パラリンピアンなんですね」と興奮気味に接してくれる社会も刺激になっている。

 リオの結果は本意ではなく、大会後は再び英国でトレーニングを続けるつもりだ。生まれつき両脚のももから下と右肘の先、左手の親指と薬指がないが「自分に合った泳ぎ方がある」と模索してきた。金メダリストとして輝く方法も見つけるはずだ。 (伊藤隆平)

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