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東京都知事選

自民、政治家擁立に二の足

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 舛添要一氏の辞職に伴う東京都知事選は、七月十四日の告示まで二週間余。自民党が前総務次官に白羽の矢を立て、擁立に向け最終調整に入ることが判明した。ほかの政党も、元官僚に熱視線を送る。都知事が二代続けて「政治とカネ」で辞職した経緯から、都政安定のため実務型を模索するとともに、カネの問題に無縁な候補者を選びたいという本音が垣間見える。 (都政取材班)

 「行政経験が豊富だし、話題性もある。パパ、いいよね」。自民党都連幹部は、桜井氏への待望論が高まった理由をそう説明する。NTT再編などを取り仕切った手腕に加え、アイドルグループ「嵐」の桜井翔(しょう)さんの父として知られる。党内では十八歳選挙権をにらみ、若い世代への浸透力もあるとみる。

 ただ、桜井氏本人は、舛添氏が辞職表明した十五日、記者団に「私は長い間、情報通信行政をやってきただけの人間。とてもそのような役を果たせる器ではない」と出馬を否定。それでも、同党の世論調査でトップの支持を集めたことなどから、今週内の決定に向け出馬要請に踏み切る。

 元警察官僚で東京ビッグサイト社長竹花豊氏(67)が、立候補の意欲を自民都連幹部に伝えたことも判明した。石原慎太郎元都知事の下、副知事を務めた経験があり、本紙の取材に「都知事の投げ出しが続き、このままじゃいけないという怒りから手を挙げようと思った」と説明した。

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 民進党などには、前厚生労働次官の村木厚子氏(60)に期待する声も出ている。厚労省の文書偽造事件で二〇〇九年に逮捕されたが、無罪が確定し復職。全省庁を通じ女性で二人目の次官を務め、知名度もある。

 ほかに、若者団体「SEALDs」(シールズ)など安保法に反対する市民連合の一部には、元経産官僚の古賀茂明氏(60)の名前も挙がっている。

 知名度勝負の人気投票と揶揄(やゆ)されることが多い都知事選だが、比較的地味な官僚経験者が注目されることについて、自民都連幹部は「今回の選挙で言えば、国会議員などのバッジ組は無理だ」と明言する。舛添氏は参院議員時代の政治資金問題が表面化したことから「政治家は多かれ少なかれ、たたけばほこりが出る。またカネの問題で追及されるわけにはいかない」と胸の内を明かす。

◆鈴木都政は4期16年

 戦後の都知事選で、中央省庁の次官経験者など「官僚型」の候補者はたびたび立候補し、八人の知事のうち二人が該当する。しかし、ここ二十年は知名度があり、タレント色の強い人材に敗れている。

 一九四七年、初代都知事に就いたのは内務官僚の安井誠一郎氏。終戦直後の官選の東京都長官から、選挙に打って出た。戦後復興に尽力し、三期務めた。

 秦野章氏は元警視総監。社会、共産両党が推薦した美濃部亮吉(りょうきち)氏の再選を阻むため、当時の佐藤栄作首相が出馬を要請。大型開発などを掲げたが、都民生活重視の美濃部氏に敗れた。鈴木俊一氏は元自治省次官、官房副長官を務めた「内務官僚のエース」。危機的だった都財政を手堅い手腕で立て直すことが期待され、最長の四期十六年間務めた。

 その後は官僚が連敗。石原信雄氏は七代の内閣に仕えた官房副長官。明石康氏は国連や外務省の要職を重ねたエリート。ともに自民などが推薦したが、青島幸男氏、石原慎太郎氏と、政党推薦を受けていない候補に敗れた。

 

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