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東京都知事選

直言 首都どうする(2) 地方への政策発信

もともとは財政破綻した夕張市に派遣された都職員だった。鈴木直道・夕張市長は「都職員は単なる地方公務員ではなく首都公務員としての役割がある」と話す(写真は市提供)

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◆元都職員・鈴木直道夕張市長

 首都である都の職員は国のことも考えなければならない。単なる地方公務員ではなく、首都公務員だ。都から財政破綻した北海道夕張市に派遣されたとき、首都公務員であることを誇りに思い、仕事をやってきた。その結果、今、市長として働いている。

 夕張市の借金の返済は、計画通り進めてきた。市長や職員の給与削減、料金の値上げなどで毎年平均約二十六億円を返している。これは市民に痛みを強いる。副作用の一つとして人口は減り続け九千人を割った。高齢化率は50%近い。それでも借金を完済するのは二〇二六年度までかかる。

 厳しい状況のなか、現在も都から職員二人の派遣を受け管理職についてもらっている。都の職員数は十六万人。夕張市は百人。都では十六万分の二の力が、夕張市では百分の二になる。都は東日本大震災で被災した東北三県にも技術職員らを派遣している。彼らも、まちづくりの中心的役割を担っている。他の自治体にとっても都の存在感は大きい。

 ただ、成長を続けてきた東京もこれから人口減が始まる。都の推計では、東京五輪・パラリンピックのある二〇年が人口のピークで約四十年後には二百六十万人以上が減る。京都府が丸ごと消滅するような事態だ。こんな急激な人口減少は東京が初めて経験することだから、そうなる前に対応しなければいけない。

 東京には地方の参考になる国をけん引する対策モデルをつくってほしい。民間の力、知恵の集まる東京が動けば国も動いて全国に波及する。石原慎太郎元知事が提唱したディーゼル車規制のようにだ。

 全国の自治体が連携して、課題を解決するという視点も必要だ。都内では熱中症で亡くなる人が多いが、北海道を集団避暑地として活用できないか。都民のためになることが過疎に悩む地方にも恩恵をもたらす。既に連携している北海道の町村会と特別区長会の活動を後押しすることも求めたい。

 首都のリーダーを選ぶ選挙は日本全体に影響を与える。だから、都知事選には地方も注目している。都民は心して選んでほしい。 (聞き手・松村裕子)

<すずき・なおみち> 1981年生まれ。埼玉県三郷市出身。高校卒業後、都庁に入る。働きながら法大の夜間部で地方自治を学ぶ。30歳のとき夕張市長に初当選。現在2期目。

 

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