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東京都知事選

直言 首都どうする(3) 原発避難者

「避難の協同センター」世話人として福島からの避難者の相談に乗る。「安心して子育てするには住まいの保障が必要」と話す岡田めぐみさん=武蔵野市で

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◆避難の協同センター・岡田めぐみさん

 東京電力福島第一原発事故が起きた時、妊娠していた。胎児や幼い二人の子たちの健康への影響を考え、福島市から都内へ避難した。武蔵野市の都営住宅に入ったが知り合いはいない。どこに買い物に行けばよいかもわからず不安だった。

 五年がたった今は、地域のコミュニティーに助けられて子育てしている。福島の自宅周辺の放射線量は事故前とは、ほど遠く高い。ここに住み続けたい。

 でも、福島県は来春、私たちのような避難指示区域の外からの避難者への住宅支援を打ち切る。東京で暮らす原発避難者約五千五百人のうち自主避難者は約千四百人いる。住宅支援が打ち切られれば追い詰められ、命を絶つ人さえ出てくるのではないか。避難者を孤立させないよう当事者や支援の専門家たちと今月、相談を受け付ける「避難の協同センター」をつくった。

 都は、打ち切りに伴う支援策として、都営住宅の公募で二百戸の自主避難者向けの枠を設けるという。でも収入要件などが厳しく、今の住宅に住み続けられるかも分からない。子育て世帯や、シニアで単身の避難者にとって、住まいを追われ、生活基盤を作り直すのは大変なこと。ニーズに合った支援策を考えるべきだ。

 自主避難者の支援が打ち切られる背景には、帰還ばかり進めようとする政府の姿勢がある。都には発言力も影響力もある。私たちに寄り添い、福島県や政府に対し、支援を続けるよう一緒に求めてもらえないだろうか。

 自分が住宅問題に直面したことで、東京の住宅問題は、私たちだけの問題ではないと感じるようになった。家賃が異常に高いのに、都営住宅を希望してもなかなか入れない。入居期間が限られているために、民間住宅に移らなくてはならず困っている子育て世帯もある。住宅政策の乏しさは、貧困の原因にもなっている。住まいが保障されれば安心して子育てできる。

 東京はこれから二〇二〇年に向けてますます五輪ムード一色になっていくだろう。その街の中で、原発事故の被害者も生きていることを忘れないでほしい。

  (聞き手・小林由比)

<おかだ・めぐみ> 1982年生まれ。福島市出身。原発事故後、福島から都内へ避難した母親らの交流組織「むさしのスマイル」を結成し、代表を務める。8〜1歳の4児の母。

 

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