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東京都知事選

直言 首都どうする(5) 雇用

個人加盟の労働組合を組織。関根秀一郎さんは「このままでは東京五輪後、大量の失業者が生まれる」と心配している

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◆「非正規」救済 充実を 派遣ユニオン・関根秀一郎書記長

 学生時代、ジャズ喫茶に入り浸った。黒人差別が生んだ音楽から差別問題に関心が高まり、人が長い時間を過ごす働く場での差別や問題の解消に取り組んできた。

 二〇二〇年の東京五輪・パラリンピックに向けて、いろんな仕事は増えるだろう。でも、派遣や契約社員といった非正規労働者は数カ月の雇用契約を更新していく働き方になる。だから五輪が終われば、みんな切り捨てられてしまう。五輪後、仕事を失う人が大量に出てくると予想される。

 有期雇用を規制する法改正ができるのは国だ。都にはそこからこぼれ落ちた人たちを救済する役割を果たしてほしい。非正規で働いてきて四、五十代になっても、職能が身に付いてない人も少なくない。もう一度、仕事に就けるように、失業している人への職能教育を充実させ、その生活を保障するために一定額を支給してもいいと思う。

 派遣労働者は派遣会社が用意する寮に住んでいる。仕事を切られて次の仕事が決まらなければ、路上に放り出されてしまう。収入が少ないから、アパートを借りるお金がない。ネットカフェで寝泊まりする「ネットカフェ難民」も多い。

 リーマン・ショックの後に「大量派遣切り」が問題化したとき、神奈川県は失業した派遣労働者に県営住宅を低家賃で提供した。東京都も都営住宅を活用した対策を検討してほしい。

 保育所に入れない待機児童問題が深刻だが、自治体による受け入れ審査で非正規労働者の優先順位が低くなる場合がある。審査で、正社員の方が保育の必要度を結果的に高く点数化されてしまう。この背景には「非正規は腰掛け」という誤解もあると感じる。

 実際には非正規労働者はフルタイムで働く人が多く、正社員の方が勤務時間が長いということはありえない。しかも、非正規の人たちの方が生活のため必死に働かないといけない必要性が高いケースは多い。

 こうした審査基準について、都が各自治体に見直しを促すことは必要だと思う。今、非正規労働者は四割に達した。けれど、非正規労働者の現状では出産、育児と仕事を両立できない。 

  (聞き手・辻渕智之)

 <せきね・しゅういちろう> 1964年生まれ。府中市出身。非正規労働者らから労働問題の相談を受け解決へのサポートに取り組む。

 

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