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東京都知事選

直言 首都どうする(6) LGBT

早大大学院時代に自叙伝「ダブルハッピネス」を出版してから10年。「やっとLGBTという言葉が広まりつつある」と話す杉山文野さん

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◆少数者に優しい社会に 東京レインボープライド・杉山文野さん

 毎年ゴールデンウイークに性的少数者(LGBT)への理解を深めるイベント「東京レインボープライド」を開いている。(LGBTの当事者として)LGBTに関する日本最大のイベントを世界に発信するため今年、都の後援を受けようとしたが、担当者は「民間の人権事業には後援していない」と回答し、残念な対応だと感じた。

 同性のパートナーシップ証明書を発行している渋谷区は後援してくれた。二〇二〇年に東京五輪・パラリンピックが開かれる。五輪憲章は性的指向による差別を禁止している。(都の対応は)時代の流れの中で、遅れた対応とも受け取れてしまう。

 これまで、LGBTは自分たちの生活の中にいない人、自分たちと違う一部の人たちという感覚を持っている人が多かった。僕も今、活動家のようになっているが、活動したいと思ったことは一度もなく、僕は僕ですと言ったら、そう見られるようになってしまっていた。でも、LGBTはすぐ隣にいる。

 社会には国籍、障害、高齢者、さまざまな立場の人たちが暮らしている。性にかかわる問題だけでなく、人に言えないコンプレックスなど何かしら生きづらさを抱えている人が多数者になっていると思う。LGBTだけでなく、どんな少数者にとっても優しい社会は、多数者にも暮らしやすい社会と言えるのではないか。

 ここ数年、やっと日本でも少しずつLGBTという言葉が広まりつつある。渋谷区の取り組みなどもあり、「いない」という前提で語られていたものが「いる」という前提で語られるようになってきている。将来的には、LGBTのために特別なことをするという意識がなくなり、LGBTという言葉自体もなくなってほしい。

 東京五輪・パラリンピックは、開催国の首都として恥ずかしくない対応が求められる。行政、民間、企業、NPOなど皆で支え合って足りないところを補って、LGBTに限らず皆が暮らしやすい東京、そういう街になるにはどうしたらいいか、知事選をきっかけに議論を深めてほしいし、新しい知事になることで社会全体の意識が変わってほしい。 (萩原誠)=おわり

 <すぎやま・ふみの> 1981年生まれ。新宿区出身。NPO法人東京レインボープライド共同代表理事。フェンシング元女子日本代表。

 

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