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東京都知事選

障害者の望みは… 心のバリアフリー進めて

都政に望む障害者支援について、手話で語る越智大輔さん=東京都渋谷区で(潟沼義樹撮影)

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 東京都内では六十四万人が障害者手帳を持つ。耳が聞こえない。目が見えない。でも、都知事選の候補者の言葉を聞き逃すまい、見逃すまいとしている。「私たちのために、どんな政策を用意しているのですか」と問い掛けながら。(都政取材班)

 「障害者も人間として生きている。障害者なりの楽しみがある。『いなくなればいい』というのは、おかしい」。相模原市の障害者施設殺傷事件で逮捕された植松聖(さとし)容疑者(26)の差別に満ちた供述を知り、都聴覚障害者連盟の越智(おち)大輔事務局長(59)=板橋区=が憤る。

 都知事選の最中に事件が起き、障害者の人権がクローズアップされた。「都には手話言語条例もない。私たちへの理解はまだまだ足りないんです」

 安心して手話を使えるようにと、普及を目指す手話言語条例。都道府県では八県が制定したが、都にはない。連盟などが、連絡先の分かる都知事候補五人に条例制定の是非を問うアンケートを送ったら、答えたのは二人だけだった。

 六歳の時に聴覚を失った。困るのは、買い物や外出先のトラブル時。筆談やジェスチャーで意思が通じるはずなのに、面倒くさそうにする健常者がいる。

 「それが悲しい。障害者が暮らしやすいハード面の整備も必要だが、心のバリアフリーが必要。条例があれば、都民の認知度が違ってくるはずだ」

 約二十年前、二歳だった次女が本棚の角に頭をぶつけ、耳から出血した。タクシーで病院に運んだが医師の説明が分からず、心配でならなかった。

 今は救急車はメールで呼べるが、病院で医師と意思疎通ができない状況は変わらない。都は今月、都立施設などにタブレット端末を設置し、画面を通して手話通訳する事業を始めた。ただ、当面の設置場所は六カ所に限られ、対応も昼間だけ。「夜中は通訳が手配できない。すべての病院や交番に、二十四時間体制のシステムを広げてほしい」

 障害者団体「きょうされん」の調査では、福祉施設に通う障害者の八割が年収百二十二万円以下だ。日本障害者協議会の藤井克徳代表(67)=小平市=は「障害者の暮らしは、本人の我慢と家族の犠牲の上に成り立っている」と指摘する。

 藤井さんは全盲で、通勤の際は娘や、職場の経費で頼んだ介助者が付き添ってくれた。「でも介助や支援がないため、就職を断念する障害者が少なくない」

 都はかつて、重度障害者の作業所や障害児の学童保育の助成など、国に先駆けた施策を打ち出した。二〇〇〇年代に入ると、そうした支援は財政難などを理由に後退した。「国の制度からこぼれた人を助ける『すき間福祉』。それを、都知事が打ち出してほしい」

 

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