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東京都知事選

<まちの論点>多摩ニュータウン 商店街を暮らしに活用

高齢化の進む多摩ニュータウンで商店街の活性化に取り組む寺田修司さん=多摩市で

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 お囃子(はやし)に誘われるように、団地の広場に次々と人が集まってきた。家族連れや浴衣姿の若者、孫の手を引く老夫婦。住民総出のお祭りが始まった。

 多摩センター駅近くの多摩ニュータウン落合住宅。恒例の「落合ふるさと夏祭り」には、近隣から六千人が集まった。「ニュータウンを出た人もこの日のために帰ってくる。彼らの子は、おじいちゃん、おばあちゃんのところの祭りを楽しみにしている」。団地の商店街で美容室を営む寺田修司さん(64)は準備に汗を流した一人だ。

 たくさんの人出を喜ぶばかりではない。寺田さんは「昔は毎週末がこんなにぎわいだった」と懐かしがる。都住宅供給公社が開発したこの地区は、一九七六年の一斉入居から四十年がたった今、商店街の空き店舗が目立つ。年配者の姿が多い。二校ずつあった小中学校は各一校に統廃合された。

 多摩ニュータウンの計画は、前回の東京五輪翌年の一九六五年から始まった。丘陵を造成した団地には、働き盛り世代が押し寄せた。一時間以上もかけて都心へと通勤する住民たちは、首都の経済を発展させる原動力となった。それが時を経て深刻な高齢化を引き起こしている。多摩市の阿部裕行市長は「都が高度経済成長を支える街としてつくった。新知事は責任を持って再生を推進してほしい」と話す。

 市はニュータウン再生方針で、住民の日常生活を支えるサービスを提供する団地商店街を街の拠点に位置付けた。近くの子育てや医療の拠点と行き来できるような便利な都市を思い描く。都も地域の防災センターとしての活用を検討している。市が目指すのは、商店街に暮らしの機能を集約した「コンパクトタウン」だ。

 寺田さんも、商店街を寂れさせたくない。公社と交渉して店舗賃料を値下げさせたり、近隣商店と協力したスタンプラリーを企画したりして活性化の旗を振る。大型店の進出などで各地の団地商店街が存続の危機にあるなか、市の取り組みはモデルケースとして注目されている。「家から遊歩道を歩いてすぐ。お年寄りも子連れのママも安心して買い物ができる」。高齢化と人口減少の時代を生き残ろうとしている。 (栗原淳)=おわり

 <メモ> 多摩、稲城、町田、八王子の4市にまたがる3000ヘクタールに、約22万4000人が暮らす。1965年に計画が決まり、多摩市諏訪・永山地区を皮切りに相次いで町開きした。

 多摩市では約9万9000人が住み、市全体の67%を占める。65歳以上の老年人口は年々増加し、2005年の国勢調査で年少人口(0〜14歳)を上回った。今年1月の住民基本台帳によると市の高齢化率は26.2%で、都平均の22.3%を大きく超える。

 

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