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都議選2017

<知らない議員 8都県チェック>(2)海外調査 高額経費、成果見えにくく

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 約二年四カ月の任期中に計九回、総額二億四千万円の海外出張に赴き、「高額すぎる」と批判された舛添要一・前東京都知事。昨年六月の舛添氏辞職の直後、都議会の川井重勇(しげお)議長は「経費の高騰などに鑑み不適切」として、同年夏のリオデジャネイロ五輪へ二十七人の都議団を派遣する海外調査の中止を発表した。

 「全面中止は過剰反応だった」。ベテラン都議は批判する。当時、都議会は舛添氏を厳しく追及していただけに、六千二百万円の予算を計上した都議団のリオ派遣も都民の厳しい目にさらされた。それでも「開催地の運営を見なければ、東京五輪に何が足りないのか議論の材料が得られない」とこの都議は反論する。

 中止発表後、複数の都議が独自にリオへ飛んだ。うち一人は「いらぬ疑いをかけられたくない」と政務活動費を使わず、宿泊費二十万円や航空代三十五万円を自腹で捻出。「都市に暮らす多様な人に光を当てる演出に感心した。新しい視点を得られた」と成果を説きつつ「舛添氏の問題がなければ身銭は切らなかった」と恨み節も漏れた。

 地方議会の海外調査は「費用の割に効果が見えにくい」と指摘され、しばしば予算削減の対象になった。神奈川、千葉の県議会は財政上の理由で過去に予算を凍結したが、ともに二〇一三年に再開した。埼玉県議会では県議がタイで女性の接待を受けた不祥事があり、今も自粛する。

 地方議会に詳しい神戸学院大の上脇博之教授は「他国との制度や文化の違いまで踏まえ、成果を示した海外調査は少ない」と、効果の乏しさを指摘する。

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 都議会も一九九六〜二〇〇〇年、財政上の理由などで中止したが、最近の四年間は六回の海外調査を実施した。一人当たりの平均費用は百八十七万円で他県と比べても高額。六回分の調査報告書は、それぞれ見聞した内容を羅列した後に「都政の向上に生かしたい」などと抽象的に締めくくる文章が目立つ。

 今月二十四日、埼玉県戸田市議五人の豪州視察は実質的な「観光」だとして、さいたま地裁が市長に対し、市議に旅費約二百四十万円の返還を請求するよう命じた。「有権者に成果を示せない調査には、今後も厳しい目が向けられるだろう」と上脇教授。都議会では本年度も約二千九百万円の海外調査予算が計上されている。 (皆川剛)

 

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