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都議選2017

妊娠中都議「議会変える」 産休・育休いまだ制度なし

当確の報を受けあいさつをする西郷歩美さん=2日、東京都中央区で

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 女性の当選者数が過去最多の三十六人に上った東京都議会選挙。そのうち新人二人は妊娠中で、年内に出産予定という。都議会で在職中に出産した議員は、確認できた範囲で一人しかいない。産休や育休の制度がないなど、出産や子育てと議員活動を両立させる環境は十分とはいえず、二人は「都議になって取り組むべきテーマ」と意欲をみせる。 (柏崎智子)

 「出産でキャリアをあきらめる女性は多くいる。そういう世の中では、男性も女性も輝けない。議会が手本になり体制を整えたい」。二日夜、中央区選挙区で当選を決めた都民ファーストの会新人で元中央区議の西郷歩美さん(32)は、選挙事務所前で力強く語った。

 妊娠三カ月目だった今年五月に出馬の打診を受けた。「都民」の担当者に、妊娠していると告げると「女性議員を増やす中で、そういうことは当たり前になっていく」と励まされ、決意したという。

 足立区選挙区で当選した「都民」新人の後藤奈美さん(30)は、党の公認候補公募に応募した後に妊娠が分かった。心配する夫(29)に「体を第一にする」と約束し出馬を決意した。

 国か地方かを問わず議員は「特別職公務員」に当たり、産前産後計十四週間の産休や最長一年半の育休を規定する法制度の対象外。都議会など多くの議会で妊娠・出産への配慮は、会議を欠席する理由に「出産」が認められるぐらいだ。

投票を呼びかける後藤奈美さん=6月30日、東京都足立区で

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 特別職公務員は労働時間の規定がなく、制度上自らの意志で産休などを取得することは可能だ。しかし後藤さんは「都議会の規定では長期間休んでも報酬が満額出てしまい、休みにくい」と指摘する。実際、二人の妊娠についてインターネット上では「(出産で)休むことが前提の出馬は無責任」「報酬泥棒」など心ない言葉が書き込まれた。

 都議として二〇〇八年に出産した松下玲子さん(46)は、出産前後の数日間だけ定例会を欠席したが、次の定例会には生後三カ月の子を保育施設に預けて出席した。「一般質問までやって相当大変だった。子どもがかわいそうと言われるのが一番きつかった」と振り返る。

 西郷さんは「一年間も休むつもりはないが、議員の仕事は激務。育休制度がないと女性は増えない」と話す。後藤さんは「任期は四年しかない上、体調にも個人差がある。どれくらいの休みが適切なのか言うのは難しいが、まずは休んだ分の報酬の減額規定を検討するべきだ」と提案する。

◆北欧では…「代理議員」整備

 女性議員をめぐる海外事情に詳しい元都議の三井マリ子さんによると、ノルウェーやスウェーデンなどでは、議員が出産や病気などで長期に休む場合、選挙の比例代表名簿で次点だった同じ党の人が代理を務める制度が整備されているという。

 三井さんは「これらの国では国民も大型休暇を取ることに慣れており、議員の休みも受け入れる土壌がある。日本ではまず政党が女性議員を支え、非正規雇用者も含めすべての女性が安心して子育てしながら働ける社会を実現することが大切」と指摘する。

 

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