東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 特集・連載 > 都議選2017 > ニュースの記事一覧 > 記事

ここから本文

都議選2017

<東京こと始め>ホームドア 盲学校の最寄り駅「優先」

ホームドアの前を歩く都立文京盲学校の生徒たち=東京都文京区の都営地下鉄大江戸線・飯田橋駅で

写真

 「盲学校がある駅への優先的な設置を(鉄道事業者に)申し入れています」。小池百合子東京都知事は五月、訪れた都立文京盲学校(文京区)で話した。

 障害者や子ども、高齢者、酔客などの転落を防ぐ切り札となるホームドア。四校ある都立盲学校の最寄り十六駅(路線の違う同名駅は複数カウント)のうち、設置駅(一部も含む)はまだ七駅だ。未設置九駅のうち、八駅は何年までに設置するという計画もない。

 「人に押されるとかして点字ブロックの外側に出てしまうと本当に怖い。ホームドアのあるこの駅は安心です」。文京盲学校の滝楓花(ふうか)さん(17)と中野萌絵香(もえか)さん(17)は、通学に使う都営地下鉄大江戸線・飯田橋駅で笑顔を見せた。

 昨夏、東京メトロ銀座線の青山一丁目駅で盲導犬を連れた男性がホームから転落、死亡した。視覚障害者にとって駅のホームは「欄干(らんかん)のない橋」。都議たちは都議会で質問するなど、整備加速の必要性を訴えた。

写真

 都議選でホームドア設置を公約に盛り込んだのは民進、公明、都民ファーストの会の三党。民進は「100%設置」、公明は「東京メトロ銀座線・千代田線各駅への設置を推進」、都民ファーストは対象や数値目標は示していない。

 新幹線を除く普通鉄道で初めてホームドアが設置されたのは営団地下鉄(当時)南北線で一九九一年。JR在来線では二〇一〇年の恵比寿駅が第一号だ。都は整備を促すため、鉄道事業者向けの補助金を本年度予算で約九億円に増額。前年度の三倍で、対象は「一日乗降客が十万人以上の駅」(補助率六分の一)を優先し、「東京五輪・パラリンピック競技会場の周辺駅」(同三分の一)も入る。都の担当者は「鉄道会社の負担を減らし、めぐりめぐって補助対象外の駅での設置も進めてほしい」と話す。

 一方、新宿区は本年度、国や都の補助対象になりにくい「十万人未満の駅」での設置に単独補助制度を設けた。「区内は障害者の方の施設も多いので」と吉住健一区長。補助率は六分の一。「区の財布は小さい。都に補助対象の緩和や補助率アップをしてもらえるなら助かる」

 都内には鉄道駅が七百五十五駅あり、全国最多。ホームドア設置駅数(昨年三月末時点、一部も含む)も二百四十三駅で群を抜く。設置率は神奈川県の17%などを上回るが、それでも32%だ。設置にはホームの大規模補強や車両の改修が必要な場合もある。費用は億単位に上り、鉄道事業者の負担は小さくない。

 例えば、混雑緩和を図る複々線化などでは、鉄道会社が運賃をあらかじめ値上げして非課税で工事費を積み立てられる国の制度が活用されてきた。鉄道政策に詳しい金子雄一郎・日大教授は「ホームドアでの国や都の財政支援にも限りがある。利用者に広く薄く負担してもらう仕組みを検討してみるのも手。交通政策を幅広く議論し、国に働きかけたり、全国にモデルを示すのも都が果たせる役割では」と話した。 (辻渕智之)

 

この記事を印刷する

PR情報