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都議選2017

<東京こと始め>民泊 ヤミ営業都 心部まん延

キャリーバッグを手に新宿高速バスターミナルに到着した外国人観光客ら=東京都・新宿駅前で

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 「もうかるからやめられない。収益も把握されないから、税金も払わなかった」

 宿泊料を徴収し、自宅の一部やマンションの空き部屋を提供する民泊。渋谷区の賃貸マンション四部屋で、数カ月前まで外国人観光客向けに運営していた女性は振り返る。

 女性は数年前にインターネットの仲介サイトで利用者を募集したところ、「ひっきりなしに客が入り、空室の日はほとんどなかった」という。清掃人を雇い、自分がやるのは鍵の受け渡しだけ。家賃などを差し引いても、毎月の純利益は四十万〜九十万円になったという。いい小遣い稼ぎだったが、「違法だ」と強く家族に反対された。

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 国は東京五輪・パラリンピックが開催される三年後、年間四千万人の外国人観光客を見込む。都議選では自民党が公約で「二〇二五年までに訪日外国人年間三千万人の観光都市に」、都民ファーストの会は「二〇二〇年に東京を訪れる外国人旅行者二千五百万人」を掲げる。民泊は増える宿泊需要の受け皿として期待されている。

 しかし、宿泊業を始めるには、消防設備やフロントの設置、客室の広さなど、数々の基準を満たし許可を得る必要がある。本来は民泊であっても許可なしの営業は違法だ。

 一六年一月、国家戦略特区に指定された東京都大田区で旅館業法の規制が緩和され、事実上、全国で初めて民泊が認められた。これによって合法的な民泊が始まったが、依然としてヤミ営業はまん延している。渋谷や新宿などの都心部で特に多く、近隣住民から不評を買っている。

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 新宿区のタワーマンション「富久クロス」。管理組合の理事長松浦秀夫さんは、住民から「夜も眠れない、何とかしてほしい」との要望を何度も受けた。民泊利用者と思われる外国人が大声で歌い、酒を飲んで騒ぐという。

 その後、松浦さんらは民泊をやめさせたというが「平穏な生活を望んでいるのに。犯罪や事件に巻き込まれるかもと最悪の事態を考えてしまう」と警戒する。

 今月、都道府県などに届け出などをすれば、年間百八十日以下で民泊営業を認める法律が成立した。一方で、ヤミ民泊施設などへの立ち入り検査をする権限を都などに付与し、今後、無許可営業に対する罰金も三万円から百万円に引き上げる予定だ。

 松浦さんは「地方行政がヤミ営業にきちんと対応できるよう、人員を確保できるか心配だ」と話した。 (石井紀代美)

 

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