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都議選2017

<東京こと始め>受動喫煙防止条例 「世界標準」からは後れ  

喫煙可能な喫茶店。受動喫煙防止に対する考え方は店により大きく異なる=東京都内で

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 「ビール本来の香りや味わいを楽しんでもらうのに、たばこは弊害だ」。二〇一三年十月に開店した「よなよなビアワークス赤坂店」(東京都千代田区)の支配人、春日大志(ひろゆき)さん(34)は店内を全面禁煙にする理由を説明する。

 開店当初は「たばこを吸えないのか」と入店してもらえなかったこともある。だが、心配された売り上げは徐々に上がり、女性に固定客ができるなど客層も広がったという。

 他人のたばこの煙を吸わない権利に対する社会的認知は高まりつつあり、都も条例化を検討する。ただ、ビアワークスのような店は少数派で、多くは店内禁煙による売り上げ減を心配する。東京・新宿の老舗喫茶店の男性店長(55)は「分煙のための改装が必要になるかもしれず、悩みは尽きない」とこぼす。

 ◇ 

 受動喫煙防止の機運が高まる背景には、二〇年の東京五輪・パラリンピックがある。国際オリンピック委員会(IOC)と世界保健機関(WHO)は一〇年に「たばこのない五輪」推進で合意。〇八年の北京大会から一六年のリオ大会まで、五輪開催都市は分煙すら認めない屋内完全禁煙を実現している。

 国は十八日に閉会した通常国会に受動喫煙防止対策を盛り込んだ健康増進法改正案を提出する方針だったが、禁煙の例外をどこまで認めるかで合意が得られず、見送られた。

 罰則付き受動喫煙防止条例は七年前に神奈川県で初めて制定されたが、全国には広がっていない。当時、神奈川県議として条例制定に関わり、現在は「スモークフリーキャラバンの会東京」の事務局長を務める関口正俊さん(69)は「生命、財産を守るのは地方自治の根幹に関わることだ。東京都もぜひ取り組んでほしい」と語る。五輪が外圧となる形で、東京で受動喫煙防止条例が実現すれば、国レベルでの法制化を後押しすることになる。

 ◇ 

 都議選では各党が、原則屋内禁煙を盛り込んだ防止条例制定を公約する。ただ、自民党は「飲食店は全面禁煙だが、三十平方メートル以下のスナック・バーは除く」、都民ファーストの会は「全面禁煙だが従業員を使用しない店や全従業員が喫煙に同意した店は除く」とした。いずれも飲食店に配慮する一方、完全禁煙という「世界標準」からは後れを取る形になっている。

 関係者からは戸惑いの声も聞かれる。喫茶店店長の男性は「政治家は選挙の時はいいことを言うが、どうなるのか」と首をひねる。キャラバンの会東京の代表で歯科医師中久木一乗(かずのり)さん(77)は「各党の公約に掲げられたことは歓迎したいが、発言を聞くと温度差があり、本当に実現できるのか心配だ」と話す。(木原育子)

 

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