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都議選2017

<東京こと始め>子どもの貧困 負の連鎖 学力にも差

子ども食堂「だんだん」の近藤博子さん=東京都大田区で

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 全国に広がる子ども食堂は、「気まぐれ八百屋だんだん」(東京都大田区)の店主の近藤博子さん(57)が七年前に聞いた話で始まった。

 「母親の具合が悪く、給食以外はバナナ一本で過ごしている子がいる」

 店を訪れた小学校の副校長の話は衝撃的だった。一人でバナナを食べている子の後ろ姿を想像し、胸が締め付けられた。ここでみんなでご飯を食べられるようにしよう。二年間の準備を経て二〇一二年八月に子ども食堂を開いた。

 貧困対策だけでなく、孤食を防ごうという目的で始め、子どもも大人も受け入れている。しかし、「ここにくるとお肉が食べられる」と話している子や、何杯もお代わりをする子がいるとハッとする。

 大田区発の子ども食堂は各地に次々とできていった。近藤さんは「何かしなきゃいけないと思う大人がこんなにたくさんいる。日本も捨てたものではないな」と話す。

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 過去一年間に、必要な食料が買えなかったことがある世帯は10%前後。必要な服が買えなかったことがあるのは15%前後。

 東京都が昨夏実施した「子供の生活実態調査」は、世帯収入という一面的な数字だけでは捉えきれない、子どもを巡る生活困難な状況を把握するために、設問に工夫を凝らした。

 調査を主導した首都大学東京の阿部彩教授(貧困・格差論)は「以前は経済的な困窮はほんの一部と考えられていたが、かなり広がっている。普通の学校に通う子どもでも食べ物が食べられていない子が相当いる」と説明する。

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 一三年に制定された「子どもの貧困対策推進法」の目的の一つは、子どもの将来が生まれ育った環境に左右されないよう、教育の機会均等を図ること。しかし、都の調査で、授業が分からないと感じる子どもの割合は、中学二年生全体で24%だったが、困窮層は52%。小学五年生全体は13%で困窮層は29%だった。

 都議選では、各党が子どもの貧困対策に力を入れる。公明、民進、共産、社民が給食の無償化・負担軽減を掲げる。自民は私立小中学校無償化。都民ファーストの会は子ども食堂との連携を唱える。

 阿部教授は「親が日々の生活で精いっぱいだと子どもの勉強まで気が回らない。根本的には労働施策が必要だが、学校でできることもある。都は教員加配や学習補助などで、授業についていけない子どもをつくらないようにしてほしい」と願う。近藤さんも貧困の連鎖を断ち切るために必要なのは教育だと考える。「親が病気になったりしても、子どもが安心して大学まで通えるように学費を無料にしてほしい」と政治に望む。 (片山夏子)

 =おわり

 

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