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都議選2017

明日の暮らし 私が選ぶ

 足元の暮らしから東京都政を考える機会となる選挙が始まった。告示日の朝、有権者が託すそれぞれの思いを聞いた。

●10代の若者 無関心ではなく投票へ

東京都国分寺市の自宅で二十三日午前にインターネットで都議選のニュースを見た中央大一年、秋元理実(さとみ)さん(19)は「これからの社会を担うのは私たち若者。政治は分からない、自分に関係ないと思わず、きちんと投票にいってほしい」と語った。秋元さんは大学のサークル「Vote at Chuo!!」のメンバーとして、同世代の若者に投票を呼び掛けている。

 小六の時に東日本大震災が起き、政治と暮らしが密接に関連していると知った。「選挙は自分の意思表示だから絶対行く方がいい」と思ってきた。十八歳選挙が始まったのは高校三年の時。参院選、都知事選と欠かさず投票している。

 「共謀罪」法案の採決が強行されるのを見て、議席が一党に偏るのは怖いと感じ、野党を育てることが大事だと思った。「幅広い意見が反映するように考えて投票したい」と語った。

●高齢者施策 低所得者の現実知って

 「バスや電車の乗車料の軽減制度の拡大など、低所得高齢者の暮らしを楽にするような、血の通った政策をお願いしたい」

 全日本年金者組合東京都本部の年金相談室長、芝宮忠美(ただよし)さん(73)=東京都足立区=は二十三日、組合の会合で滞在している静岡県内のホテルで語った。

 住んでいる都営団地では、自治会役員として見守り活動に取り組む。住民のほとんどは低所得の高齢者。「安い食品を買うなどして出費を切り詰め、生活保護に陥らないよう、ぎりぎりのところで踏みとどまっているお年寄りもいる」と明かす。

 団地では、夜になっても明かりがつかない部屋が目立つ。「節約のため。わずかでも光熱費を削りたいから」。現役世代とのバランスで、高齢者への社会保障費を抑えるのは仕方ないと思う。「でも、この現実を候補者にも知ってほしい」

●女性活躍 本当の男女平等社会を

 世田谷区の河内麻由子さん(37)は、一歳の長男を保育園に送り、午前九時半ごろ東京駅前の職場に出勤した。食品メーカー・カルビーで、商品ブランドのPRなどを担当する。

 女性を含め多様な人が活躍できる職場作りのトップランナーとして知られる同社。女性管理職も四分の一近くに上り、河内さんも今年四月の育休復帰後、課長として奔走する。

 「会社の制度は整い、女性も活躍してほしいと言ってもらえる。でも、まだ本当に男女が平等に働いていける社会ではない」。妊娠中からの「保活」に苦労し、育休中も不安が尽きなかった。社会に根強い「子育ては母親」という重圧も感じながら、両立を模索する日々だ。「保育所を増やすといった施策はどの候補者も訴えるはず。その奥に垣間見える、本当に多様性を大切にする考えを持つ人なのかどうかを見極めたい」

●障害者 点字翻訳もっと広げて

 「行政から自宅に届く文書のほぼ全てが、いまだ点字化されておらず、読むことができない」。東京都豊島区の視覚障害者、織田洋さん(63)は二十三日、理事長を務めるNPOの事務所で福祉の充実を求めた。

 行政の大事な文書と分からず、ダイレクトメールと一緒に捨ててしまったこともあった。現在は、封筒の表紙をパソコンの音声変換ソフトで読み取り、「大事そう」と判断したものは週に一回、港区の都障害者福祉会館に持ち込んで、点字に翻訳してもらう。

 以前、点字にした国民健康保険料の通知書で、間違って多く請求されているのに気が付いたことも。「文字を使うことで、何度も読み返し、深く考えられるようになる」と実感する。

 金融機関の口座記録や電気・ガスの請求書などは、点字化されて久しい。「一刻も早く、行政もあらためてほしい」と力を込めた。

◆待機児童や働き方 日常の課題解決を

<ワーク・ライフバランス(東京)の小室淑恵(よしえ)社長の話> 市場移転や東京五輪の問題解決も私たちの税金の使い道であり重要だが、多くの都民が日常的に直面しているのは待機児童や介護を含めた働き方の問題だ。声を上げる暇もないくらい忙しい人たちの課題を拾ってほしい。女性候補はまだ少な過ぎるくらいで、意思決定の場に、女性や今後より負担が増える働く世代が入っていくことが大事だ。候補者が自分の体験を通して何が本当の課題かを語れるか、その問題意識や憤りを当選後も維持できる人かどうかを有権者は見極める必要がある。

 

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